五代目当主の佐次本貢之店長に美味しいお茶をお届けするためのこだわりについて、
お話を伺いました。
一直火の焙煎機には技術が必要と仰っていましたよね?
そうです。
焙煎については一番味の変化が出る工程なので、
企業秘密で仲間もなかなか教えてくれないんですよ。
お茶の仕入れはどうしても似てしまうので、
同じ機械で同じように作ったら同じ味になってしまうかもしれません。
まず焙煎の機械にもメーカーが色々あり、
大きく分けるとガス・電気が主流です。
佐次本製茶はガスの遠赤外線の直火。
うちの機械は火加減や扱いに技術が必要なため、
使っている人が少ないと思います。

ー焙煎の工程は貢之さんがお一人でされるんですか?
焙煎は僕がメインでやっていたんですが、
ここ4~5年は父親がやっています。
父親は焙煎が上手です。

ー焙煎について以前、”ミディアム レア”という表現をされて ましたよね?詳しく聞かせて下さい。
均ーに火入れしてしまうと美味しくなくなるというのが僕の持論です。
あえて不均ーで味にばらつきがあるように焙煎しています。
大中小に分けた茶葉を全部均ーに焙煎するとのっぺりするので、
不均ーで火入れして、 香ばしい部分とフレッシュな部分を混ぜることで
奥行きがでます。
やっぱりステーキなんですよね。
電子 レンジでチンしたみたいに中も外も同じような火加減だと全然
美味しくないと思うんですよ。 こんなことを考えてるのはもしかする
と僕だけかも知れません。

ー他のお茶屋さんはそうではないんですか?
普通に考えると均ーに火入れをするという考えになるかも知れないですね。
ほとんどのお茶屋さんは風味が変わらないように、 多い最で一気に焙煎して、
製品的に安定させていると思うんですが、 味の奥行きはうちのやり方の方が
出ると思います。

あとうちは機械がすごく少ないんですよ。できるだけシンプルに仕上げる。
お茶屋さんによっては機械がたくさん置いてあり迷路のようなラインでお茶を
作っているところもあったのですが、僕は手をかければかけるほど、お茶の
味が落ちてしまっているように感じてできるだけシンプルに美味しいお茶を作りたいと思い、それを基本にしています。
ー「お茶は温度差に弱いから、できるだけ負担をかけないように している」という言葉が印象的だったんですが、詳しく教えて いただけますか?
あら茶は冷蔵室で保管しています。今、2度くらいです。
焙煎前に常温に戻すんですが、夏はエアコンのきいた20度くらい
の部屋でゆっくり戻します。
冷蔵庫から冷たいものを出すと結露するじゃないですか。温度差が
大きいと湿気を吸いやすいんです。外気温を見ながら冷蔵温度を
調整しています。
冬は温度差があまりないのですが、夏はとても気を使います。

ー湿気を吸うと、どうなってしまいますか?
茶葉が湿気を吸ってしまうと、香りが薄くなって風味が飛んでしまう。
冷蔵庫の中がすごく乾燥していて、外に出すと封を開けた時に湿気を吸いやすいので注意が必要です。料理もそうじゃないですか、 持って帰って冷蔵庫で冷やすと味が落ちるのと同じです。
昔はよくとにかく冷やしていたんです、常温でおいておくと傷むんじゃないかと思って。
でも冷蔵庫に入れたり出したりするのを繰り返すと味が落ちたなとわかって、感覚ですけど。
香りが飛ぶのかな、冷蔵庫の中がすごく乾燥していて、外に出すと封を開けた時に湿気を吸いやすいように思います。

ーおいしいのは、 焙煎後どれくらいまでですか?
僕の求める風味であれば1ヶ月くらいかな。
作りたてがやっぱり一番美味しいので、 すぐ出すようにしてます。
料理なんかもそうですよね、
いくら美味しい料理でもできたものを次の日に食べても... 。
作ってすぐのお茶と1ヶ月後だと香ばしい風味がだんだん薄れていきます。

ーパッケージの工程を今日見せてもらいましたが、一つ一つ手作業で
真空バックされてましたね。
真空パックが一番鮮度が保たれるんですか?
僕は真空バックのカチカチが好きなので。検証したわけではないんですが、 鮮度は真空が保てるんじゃかなと思ってます。
多くのお店さんは自動の機械でやっているので真空ができないのかもしれません。
カチカチはやりにくいんです。手作業じゃないと。手作業の強みというか。

ぜひ、こだわりの美味しいお茶をご賞味ください。

